金曜, 21 9月 2012 11:20

音楽と美術

カザフ文化で忘れてはならないものに、音楽と美術があります。

アルタイ山脈とはとても自然豊かで風光明媚な所です。空や湖、川のこれ以上は望めないという青さと、夏になると緑の草原に咲き誇る色とりどりの花たち、青々とした森に覆われ、真っ白い雪を永遠に被ったままの山々・・・。実に素晴らしい所です。

しかし、実は、一年のうちのわずかに1,2ヶ月しか花や草原を見ることは叶いません。殆どの季節が、茶色い大地、白い雪、青い空だけの世界なのです。色彩的には非常に乏しいものがあります。

でも、カザフ民族たちは心の中に沢山の輝く色を持っています。この色は、いわゆる、目に見える色彩はもちろんのこと、様々に奏でられる沢山の”音色”でもあります。

カザフの音楽

カザフ人たちが歌う歌や民族楽器で奏でる曲の多くは、そこに物語があります。彼ら自身、愛する人や家族と離ればなれになったり、故郷を捨てて移動しなければならなかったりという辛い経験をしています。ですから、自然と、失われた何か、失われそうな何かをテーマに、そのものを懐かしむと同時に、後世に、大切なものを伝えようという歌・曲が多くなります。

平安な日常に作られた土地での出来事を歌った歌、愛の唄、子供を思う親の唄、離れて暮らす親を思う唄、様々な知恵を伝えるために歌われた歌などの他に、戦いに巻き込まれ逃げ惑う中で作られた故郷を思う唄、別れの唄、大切な人を見送る唄・・・・。どの歌にも想いが込められていて、歌詞が判らなくても、心に響いてきます。

国境という無粋な線で、同胞たちが離ればなれにされてしまう前、サル セロゥと呼ばれる人々がいたと聞きました。この人たちは、とても素敵な衣装を身にまとい、ドンブラを抱えて、アルタイ山脈各地を回り、それぞれの土地に伝わる歴史を背負った歌を学び、また別の所に行ってはそれを歌い伝えていたと言われています。彼らが、バラバラに暮らすカザフ人たちの歴史を相互に伝承しあい、残したのだと思われます。残念ながら、今はもう、サル セロゥという人々は存在できなくなっています。

いずれにせよ、このような形で伝承されてきた音楽ですから、同じ曲でも土地によって違っているものも多くて、音楽が自由に奏でられ続けてきたという伝統を感じることができます。

カザフを代表する楽器と言えばなんといってもドンブラでしょう。もちろんプロの演奏者もいますが、在野の演奏者もまだまだたくさんいて、音楽が民衆の手の中にあることを教えてくれます。 

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カザフの美術

カザフ人たちは家の中を、”これでもか!”というくらいに装飾します。美しい家は女性の誇りであり、また男性の自慢でもあります。

カザフの装飾文化については、カザフ情報局ケステの「装飾文化」のコーナーを参照ください。日本ではほとんど報告されていないようなおもしろい話がたくさん書かれています。ここで、中途半端に書くのは野暮というものでしょう。 

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文責:NPO法人しゃがぁ理事長 西村 幹也